カトリック結婚準備講座
結婚への準備 ― 人間・愛・秘跡・家庭・信仰・使命
はじめに ― 結婚を準備するということ
カトリックにおける結婚準備は、結婚式の準備だけではありません。それは、人間として成熟し、愛することを学び、神の前で自由に結婚を選び、夫婦として生涯を歩む準備です。
結婚について理解するためには、まず次の問いから始めます。
- 結婚とは何か。
- どこから来たのか。
- 何のためにあるのか。
第Ⅰ部 結婚の根本 ― 起源と目的
1.結婚の起源 ― 神の創造
カトリック教会は、結婚を単なる人間社会の制度として理解しません。結婚の根本は、神の創造の計画にあります。
創世記は、人間が男と女に創造されたことを語っています。
「神は御自分にかたどって人を創造された。神にかたどって創造された。男と女に創造された。」
― 創世記1:27
そして、
「それゆえ、男は父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる。」
― 創世記2:24
ここから、結婚には神が与えた基本的な秩序があることが分かります。
結婚の根本
神の創造 → 男女の出会い → 愛 → 自己奉献 → 生涯の生活共同体
結婚は、人間が自由に作り出した単なる契約ではなく、人間が神の創造の中で受け取った召命として理解されます。
参考:創世記1:26–28;2:18–24
カテキズム1601–1605
2.結婚の目的 ― 何のために結婚するのか
カトリックの結婚を理解するためには、その目的を明確にする必要があります。結婚には、特に二つの基本的な方向があります。
第一の目的 ― 夫婦相互の善(bonum coniugum)
夫と妻が互いに愛し、支え、成長し、人生を共に歩むことです。
結婚は、
「自分が幸せになるために相手を得る」
というものではありません。
むしろ、
「私はあなたの善のために、自分自身を与えます」
という関係です。
第二の目的 ― 子どもの誕生と教育(bonum prolis)
結婚の愛は生命に開かれています。夫婦の愛から新しい生命が生まれた場合、その子どもを受け入れ、愛し、教育する責任があります。
したがって、子どもは夫婦の所有物ではありません。子どもは神から与えられた尊い生命です。
参考:創世記1:28
詩編127:3
カテキズム1652–1654
3.結婚は「二人だけ」のためではない
カトリックの結婚は、夫と妻の幸福だけを目的とするものではありません。
- 夫婦の善
- 生命への開かれ
- 子どもの誕生と教育
- 家庭の形成
- 教会への奉仕
- 社会への奉仕
したがって、夫婦 → 家庭 → 教会 → 社会という使命があります。
家庭は社会から切り離された閉じた場所ではありません。夫婦の愛は、家庭を通して社会へ広がっていきます。
4.教会法上の明確な根拠
教会法典1055条は、結婚を男女が「全生涯の共同体(consortium totius vitae)」を形成する契約として述べ、その本質的な方向を夫婦の善と子どもの誕生・教育に置いています。
さらに、洗礼を受けた男女の有効な結婚は、キリストによって秘跡へと高められます。
理解の流れ:
神の創造
↓
男女の出会い
↓
愛と自己奉献
↓
生涯の生活共同体
↓
夫婦相互の善
↓
生命への開かれ・子どもの誕生と教育
↓
結婚の秘跡
↓
家庭の教会
↓
教会と社会への使命
根拠:創世記1:27–28、2:18–24;マタイ19:4–6;教会法典1055条;カテキズム1601–1605、1652–1654。
第Ⅱ部 人間の尊厳と男女
5.人間の尊厳
結婚を理解する前に、人間そのものの尊厳を理解しなければなりません。
すべての人は神の似姿として造られています。
したがって、人間の価値は、
- お金
- 学歴
- 職業
- 容姿
- 健康
- 年齢
- 社会的地位
によって決まりません。
結婚において配偶者を、所有物ではなく、一人の人格として尊重することが必要です。
聖書:創世記1:26–27
参考:カテキズム1700–1706
6.男女の尊厳・平等・違い
男性と女性は、人間として等しい尊厳を持っています。
同時に、男女には身体的・心理的・人格的な違いがあります。
この違いを、優劣として理解するのではなく、互いに支え合う可能性として理解します。
結婚生活では、支配ではなく協力、競争ではなく奉仕を目指します。
第Ⅲ部 愛と自己奉献
7.愛とは何か
キリスト教的な愛は、単なる感情ではありません。
感情は変化します。
しかし、愛は相手の善を願い、相手のために自分自身を与える決断です。
「愛は忍耐強い。愛は情け深い。」
― 1コリント13:4
愛には、忍耐・忠実・真実・赦し・責任が含まれます。
8.愛と自己奉献
結婚は自己奉献の生活です。
- 時間を与える。
- 相手の話を聴く。
- 相手を助ける。
- 赦す。
- 苦しみを共に担う。
- 喜びを共にする。
これらはすべて自己奉献の具体的な形です。
イエスは言われます。
「友のために自分の命を捨てること、これ以上に大きな愛はない。」
― ヨハネ15:13
9.夫婦のコミュニケーション
愛はコミュニケーションによって育ちます。
大切なのは、話すことだけではなく、聴くことです。
- 相手を遮らない
- 侮辱しない
- 脅さない
- 操作しない
- 過去の失敗を武器にしない
- 正直に気持ちを伝える
実践:一人3分間話し、もう一人は黙って聴きます。その後、
「あなたはこう感じているのですね。」
と確認します。
10.赦しと和解
結婚生活では、二人とも間違えます。
だからこそ、謝ることと赦すことを学ばなければなりません。
しかし、赦しは暴力や虐待を我慢することではありません。
安全に関わる問題がある場合には、司祭、専門家、医療機関、相談機関などの支援を求めます。
聖書:マタイ18:21–22
コロサイ3:12–15
第Ⅳ部 カトリックの結婚
11.カトリックの結婚とは何か
ここまで学んだことをまとめると、カトリックの結婚とは、男女が自由な同意によって結ばれ、生涯にわたる生活共同体を形成し、夫婦相互の善と子どもの誕生・教育に向かう契約です。
そして、洗礼を受けた男女の有効な結婚は、キリストによって秘跡とされた結婚です。
教会法典1055条
結婚は、consortium totius vitae、すなわち「全生涯の共同体」として理解されます。
12.一夫一婦制と忠実
カトリックの結婚には、唯一性と忠実があります。
結婚とは、
「私はこの人と生涯を共に歩みます。」
という決断です。
忠実とは結婚式の日だけの約束ではありません。
毎日、
「今日も私はあなたを選びます。」
という生き方です。
教会法典1056条
結婚の本質的特性として、単一性(unity)と解消不能性(indissolubility)が示されています。
13.結婚の秘跡
洗礼を受けた男女の結婚は秘跡です。
夫婦の愛は、キリストと教会との愛のしるしとなります。
したがって、結婚生活そのものが信仰生活になります。
夫婦が互いに忠実であること。
赦すこと。
仕えること。
苦しみを共に担うこと。
これらも秘跡の恵みを生きる具体的な道です。
聖書:エフェソ5:25–32
14.教会法と結婚
結婚の中心には、自由な同意があります。
教会法では、
- 結婚障害
- 結婚前の準備
- 自由な同意
- 教会法上の形式
- 異宗教間の結婚
- 異なるキリスト教教派間の結婚
- 同意能力
などが扱われています。
具体的な手続きは教区・小教区によって異なるため、担当司祭に確認します。
参考:教会法典1057条、1058–1065条、1083–1094条、1095–1107条、1108–1123条
